高田屋外交 ゴロヴニン事件解決後200周年記念版
A4版128 頁 2014.8/ 定価1,830円(本体1,664円+税
鎖国日本を震撼させた文化露寇からゴロヴニン事件の解決に至るまで、 高田屋外交の舞台裏を史料を駆使して甦らせる。
他を識(そし)ら ず自(みずから)を誉(ほめ)ず、世界同様に治り候国は上国と心 得候、好(このみ)て軍(いくさ)を催し人を害する国は、国政悪 敷(あしき)故と心得候、
嘉兵衛本人が事件を口述した『高田屋嘉兵衛遭厄自記』を国内初の翻刻。
ごあいさつ
一八世紀以降、日本がいやおうなく国際社会の荒波に投げ入れられていく過程の中で、隣国ロシアとの度重なる交流史がいかに重要な意味を持ったかは、繰り返すまでもないでしょう。それは必ずしも平穏な相互理解への階段ではなく、とてつもない痛みを伴うこともありました。とりわけ近世の日本人にとって、未曾有の外国の攻撃を受けた文化露寇(フヴォストフ事件)は衝撃的な事件でした。それに続く「ゴロヴニン事件」は、いわばこうした両国の相互不信の極みの中で生じた出来事でもありました。
対外関係は、自国の法や慣習といった規範のみで解決できるものではありません。嘉兵衛の交渉相手となったリコルドの言葉に従えば、「生まれ故郷が地球の半周ほども隔てられている二つの国民」の間にあって、「全く異なる価値観や概念を持つ両国の頑迷な利害」を「相互利益への同意」にまで止揚し、両国の紛争連鎖を見事に断ち切った「高田屋外交」とは、どのようなものであったのでしょうか。その意義は、いまこそ問い直されるべきだと思います。