


嘉兵衛翁生誕二三〇周年に際し来日したリコルド子孫が携えてきたクロンシュタット区長から五色町長への親書
尊敬する、高田屋嘉兵衛の故郷の皆様にご挨拶申し上げます。18―19世紀の日露関係史を研究している有名な日本の学者、保田孝一教授がサンクト・ペテルブルグを訪問した時、淡路島の五色町とコトリン島のクロンシュタット市は、姉妹都市関係を結ぶのにふさわしい条件を互いに持っていると発言しました。私達はこの考えに注目し、その実現のためのあらゆる根拠がそなわっていると考えます。
1704年に誕生した時からクロンシュタットは、ロシア帝国の首都の《海の門》として重要な役割を果たしてきました。三世紀の間クロンシュタットは、サンクト・ペテルブルグへの訪問客を暖かく迎え、そしてこの市を敵の手から防衛してきました。対日本を含む軍事的科学的海上遠征隊が、ここで組織されました。そしてその多くは、政治的にも経済的にも、産業や商業の分野でも重要な成果をあげました。この地の海軍兵学校では、ロシアの海軍軍人、学者や政治家が教育を受けています。そのなかには、日露関係の確立と発展のために大きく貢献したワシーリィ・ゴロヴニンとピョートル・リコルドがおります。この二人は、ここクロンシュタットから三つの大洋の有名な航海に帆船ディアナ号で出航し、それはクナシリ島におけるドラマチックな事件で終わりました。不信と敵対からはじまったこの事件は、ロシアの海軍軍人と日本の商人高田屋嘉兵衛との間の相互理解と友情によって塗り替えられました。淡路島にこの友好の碑が建立されたのは偶然ではありません。
今日、クロンシュタット市は外国との姉妹都市関係を成功裡に発展させております。ツーロン(フランス)、ノルドブルグ(デンマーク)、オクセレスード(スウェーデン)、ピーラ(ポーランド)、ミュルハウゼン(ドイツ)、コトカ(フィンランド)と姉妹都市協定を結んでおります。姉妹都市関係発展の枠内で、大学生、小中高の生徒の交換、展覧会や創作集団、スポーツチーム、教育・医療関係者の相互派遣が実施されております。相互経済計画も実現されており、自由経済発展特区をつくったために、これは特に魅力的なものになっております。
我々は、五色町と姉妹都市関係を締結するという考えを支持します。成功すれば、五色町はアジアにおける最初の姉妹都市になるでしょう。我々は、この方向へのどのような発議をも歓迎するでしょう。
クロンシュタット区長 V・L・スリコフ
(日本語訳 保田 孝一)