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『日本幽囚記』の世界 アイヌモシリ・罪と罰・戦争と平和


目 次 
ワシリィー・ゴロヴニン略歴

一章 アイヌモシリ
アイヌとカムイ / 和人とアイヌ / ロシアの千島進出 / 和人のアイヌ観 / アイ ヌと疱瘡 / アイヌと蝦夷三官寺 / アイヌと宣教師 

二章 日本民族の起源  
日本民族の起源

三章 日本の宗教 
神道 / 仏教 / 儒教 / キリスト者の反論 / 理神論 / 星辰信仰 / 日本人とキリスト教 

四章 罪と罰 
江戸の刑罰 / 敵討をめぐる諸相 / 明治以降の敵討 / 火罪と逆罪 /
鶴御成 / 聖と俗 / 拷問〔牢問〕 / 内済 / 獄舎 / 連座 / アイヌと法律

五章 戦争と平和
祖国戦争 / 江戸の兵学 / 仮想敵としてのロシア / 鎖国と平和 / 日本人と勇気 / 鎖国と永遠平和 / 文化露寇と『防海策』 / 和戦両論の間で / ペリーと砲艦外交

 

A5版160 頁 2021.3/ ISBN 978-4-9904027-7-8
定価1,320円(本体1,200円+税)

序にかえて
  『日本幽囚記』は、文化11年 (1811 )7月から2年3ヶ月を箱館と松前で虜囚生活を送ったロシア海軍士官ゴロヴニンによる手記である。縁あって、その翻訳に取り組んだ。きわめて個人的な体験ではあるが、本書はその訳文と格闘する中で得た、いくつかの発見の備忘録である。

 論考などという言葉からはあまりに遠く、個々の論述の言葉足らずに加えて、ケンペル、シャルルヴォア、カロン、モンテスキュー、ヴォルテール等、ゴロヴニンの書架に並べられた著者の言葉の断片をなぞりながら、それに歴史軸から離れたアヒストリカルなアイヌの神謡を重ねようとするような無鉄砲な論旨の飛躍は、救いようがなく支離滅裂で、実直な学問の士の内には苦々しく思われる方がおられるかもしれない。

  その原著者の声色を真似て、小さな声で呟いてみる。もし『日本幽囚記』という作品が、その本来の姿以上に私達に知られた存在であるならば、この驚くべき作品に関してかくも不完全かつ不充分な説明を付け加えようとは思いもしなかったであろう。しかし現在のわが国の知識水準に鑑みて、それがどのような情報であったにしても、おそらく一部の読書人には好意的に受け入れて頂けるのではないかと思う。

 来日した外国人という「他者」の目から「日本」を再構築 ( あるいは脱構築 ) しようとする試みは、これまで何度も繰り返されてきた。本書の無謀は、それを単なる「異国趣味」という縦糸の系譜に留めず、そこに時代の思想潮流という横糸を編み込もうとしたことにある 。

 我が国でかくの如く日本人論が関心を集め続けるのは、おそらくその国民が未だ心のどこかに万世一系の矜持を隠し持ったまま自分探しの旅を続けているからだろう。現在が陥った思考の惰性を揺り動かす一石となればと願う。